腎不全チーム医療協議会(Kicos)

CKDを知ろう

スペシャリストからの情報 第1回

Last Update:2019年5月1日

下剤に頼らない透析患者の便秘対策

NPO法人 日本コンチネンス協会 西村かおる

便秘は一般的に良く見られる症状で、便秘の有訴率は人口1,000人につき男性26、女性48.7、高齢期に入ると一挙に増加し男性は70歳代75.9、80歳代128.8、女性は70歳代93.2、80歳代116.2となる。(国民生活基本調査 平成25年)アンケートによる透析患者の便秘有症率は52%と報告され(西原他2004)一般の便秘有訴率よりはるかに高い。
 便秘の分類は色々とあるが日本では器質性、機能性に大別され、機能性が更に弛緩性便秘、痙攣性便秘、直腸性便秘と分類される。国際的には特発性、続発性に分類され、特発性で腸管拡張が無い場合、結腸通過時間正常型、結腸通過時間遅延型、排便排出型に分かれる。続発性には器質性、内分泌性、神経性疾患、薬剤性、直腸肛門異常などが入る。透析患者の便秘症状がどのタイプかといった調査研究は見当たらなかったが、日本の分類で言えば弛緩性便秘と直腸性便秘、国際的な分類によれば糖尿病や薬剤性の可能性が高く、続発性と言えるのではないか。いずれにしても結腸通過時間遅延、直腸からの排出が出来ない状態と思われる。
 透析患者の便秘有症率が高い理由は、①食物繊維摂取不足②腸内細菌叢の乱れ③水分制限④糖尿病による自律神経障害⑤薬剤性⑥運動不足、等が挙げられる。
 便秘対処に下剤が使用されるが、本来は頓用として使用すべき腸刺激性下剤が日本では第一選択とされ、常用されることが多い。特に透析患者は酸化マグネシウムの使用が困難なため、センナ系の腸刺激性下剤の使用頻度が最も高いという報告がある(秋山 2010)。センナ系の腸刺激性下剤は依存性、耐性を生じるだけでなく、センナの代謝成分が大腸粘膜に沈着し、粘膜が黒褐色になるMelanosis coli(大腸黒皮症)が起こり、腸の働きが落ちるとも言われている。まずは下剤、特にセンナ系の腸刺激性下剤に依存しないことが重要である。
 対処としてプレバイオティクス(腸内微生物のバランスを改善することによって宿主動物に有益に働く生菌添加物、具体的には食物繊維・オリゴ糖等)とプロバイオティクス(結腸内の有用菌の増殖を促進、あるいは有害菌の増殖を抑制し、その結果腸内浄化作用によって宿主の健康に有利に働く難消化性食品成分、具体的には発酵食品・整腸剤等)を組み合わせたシンバイオティクス摂取が改善につながると期待できる。透析患者の摂取制限を考慮した上で、どのように摂取するかが重要である。

Copyright © Kidney dysfunction team medical coordination & Council All rights reserved.
このページの先頭へ