腎不全チーム医療協議会(Kicos)

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Last Update:2019年9月8日

「透析医療にかかる診療報酬の改定から1年」

 湯沢賢治先生(独立行政法人国立病院機構水戸医療センター 臓器移植外科)

 腎代替療法の中で、完全に腎機能を代替することが出来る唯一の方法は腎移植である。しかし、わが国では、欧米諸国と比較して腎代替療法として圧倒的に血液透析が多く、腹膜透析と腎移植は極めて少ない。この原因として、腎代替療法が必要な末期腎機能障害の患者に対し、腎代替療法導入に際して血液透析以外の療法、すなわち腹膜透析、腎移植についての十分な情報が提供されていないという問題があった。

この問題を解決するため、20184月の診療報酬改定に向けて、2017年春から日本腹膜透析医学会が中心となり日本腎臓学会、日本透析医学会、日本腎不全看護学会の4学会が、腎代替療法として腹膜透析について患者に情報提供を行うことに対して診療報酬を付けるよう働きかけが始まった。しかし、20177月に、腎代替療法として腹膜透析だけでなく、腎移植についても情報提供が必要であるとのことで、この働きかけに日本移植学会が加わり5学会共同での動きになった。結局、腎代替療法として腹膜透析と腎移植について情報提供を行うことに対して診療報酬を付けることが要望された。この動きを受けて、201710月の日本透析医学会で緊急シンポジウム「腎代替療法の適切な情報提供」が企画され5学会の代表が集まり、5学会の要望としていくことが確認された。

この結果、腎代替療法として血液透析、腹膜透析、腎移植についての適切な情報提供が行われた場合に診療報酬が支払われるよう検討が開始され、2017128日の中医協総会において検討項目の第1に選ばれた。そして、2018124日に「腹膜透析や腎移植の推進に資する取り組みや実績等を評価する。」として診療報酬化の方針が決定し、その要件の検討が始まった。最終的に27日に報酬額が決定し、35日には具体的な要件も決定した。この要件の検討過程で、「移植後患者指導管理料」の様に、レシピエント移植コーディネーターの存在として「人」を要件としたかったが、慢性腎臓病療養指導看護師や腎臓病療養指導士では不十分で「人」として適当な資格がないため、「施設」の実績を要件とせざるを得なかった。

この「腎代替療法の情報提供の診療報酬化」を受けて、20184月以降、腎移植症例数の増加、日本臓器移植ネットワークへの献腎移植希望登録者の増加が期待された。しかし、201812月までの腎移植症例数の統計データを詳細に検討してみると、残念ながら201854月以降、腎移植症例数は全く増加していない。また、日本臓器移植ネットワークへの献腎移植希望登録者は逆に減少している。この詳細と問題点を報告し、今後の展望を述べる。

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